「だって……」

 皐月の顔が、泣きそうに歪む。



「藍ちゃんが……」

 細くなる声を聞き逃すまいと陽介が近づくと、き、と皐月はその顔を睨みつけた。

「そうよ。藍ちゃんなんて、大嫌い!」

 私の陽介を、奪っていくから。

 そこまで口にすることはできずに、皐月は陽介に背を向けて逃げ出した。



「皐月……?」

 呆然と見送る陽介を、あたりの生徒がもの珍しそうに見ていた。



  ☆