「いや、俺にだってよくわからないし……」

 ぎゅ、とにぎりしめた皐月の手が震えた。

「もうあの子に関わるのやめなよ」

 こんなこと言ったらいけない。それは皐月にもわかっていた。なのに、ずっと胸にあったドロドロした嫌な感情は、一度あふれだしたらもう止まらない。



「なに?」

「藍ちゃんて、あれで結構男癖悪いの。1年の時からモテてたけど、付き合った彼氏が長くても一週間とかしかもたないんだよ」

「は? 藍が?」

 そんなの嘘だ、と皐月自身もわかっている。それでも、陽介にこれ以上藍に近づいてほしくないという思いが、皐月にそれを言わせてしまった。