「いいけど、戻しとけよ」

「藍―!」

 廊下の向こうから、同じようにクラスに戻るらしい藍のクラスの女子が、藍を呼んだ。彼女たちに手を振りながら藍は走り出す。



「じゃあね、皐月ちゃん。陽介君、また望遠鏡見せてね」

「ちゃんとあったかくして来いよ」

「はあい」

 陽介がなんとはなしに藍の後ろ姿を見ていると、皐月の静かな声がした。



「陽介、藍ちゃんと一緒に星見たの?」

 ああ、と反射的に答えた陽介は、次の瞬間、しまったという顔になる。

「なんで私にはダメって言ったくせに、あの子には見せてるのよ」

「偶然だよ、偶然」

「偶然? 夜中に? それにまた見せてって……どういうこと?!」

 急に怒り始めた皐月に、陽介は困惑しながら答える。