不意打ちで見せられた夜には決して見られない満面の笑みに、陽介の鼓動が跳ね上がった。

「ほ、ほらみろ、やっぱり怖かったんだろ」

「怖かったー。だから、半影月食も一緒に見ようよ」

「何時だと思ってんだ。これ、朝方だぞ」

「いいよ。私は平気」

「よくないって」


 ひそひそとページをめくっている二人を、図書館を出ようとした皐月がみつけた。奥のデスクで自習をしていたので、後から陽介が入ってきたことには気づかなかったらしい。

 陽介を見つけたことは嬉しいが、額をくっつけるようにして雑誌をのぞき込んでいる二人の姿に皐月は眉をひそめる。


(また二人で話してる。……もしかして、ここで二人で会う約束でもしてたの?)

 想像は、考えまいとしても悪い方向へとどんどん進んで行ってしまう。

 陽介が心を許す隣の席。そこには今まで自分が座っていたと思っていた。けれど、今そこには別の女子が座りかけているような気がする。