「藍って、いつもあんな時間にふらふらしてるのか?」

 藍は、ふふ、と目を細める。

 大きな声が出せない分、いつもよりおとなしいその姿は、少しだけ夜の藍を連想させた。陽介は明るい陽の中にもかかわらず、無表情で空を眺める藍をその姿に重ねて落ち着かない気持ちになる。


「そうね。夜中の散歩が趣味、ってことにしておいてくれる?」

「物騒な趣味だな。女子が一人であんなとこにいるのはあぶないぞ」

「大丈夫よ。いるのはオバケくらいだもの」

「え。本当にいるのか?」

 星を見るために深夜にもあちこち出歩く陽介だが、いまだにそういうモノに出逢ったことがない。


「どうかな。見たことないの?」

「俺は空ばかり見ているから、隣にいても気づかないかも」

「私には気づいたじゃない」

「そりゃ、藍は生きた人間だから」

 なぜか藍は、嬉しそうに笑った。

「うん。みつけてくれてありがとう」