「ん……」

「行こう、裕子。私も一緒に行くから」

 赤羽と仲のいい女生徒が言うと、少しためらってから赤羽はおそるおそる陽介の背につかまった。陽介は、赤羽を背負って軽々と立ち上がる。

「大谷先生には、3人が保健室に行ってること伝えておくわ」

 赤羽のスカートを整えながら、皐月が言った。

「ああ、頼む」

「気をつけていけよ、陽介。大事なお嬢様なんだからな。第一、軽い赤羽さんと違ってお前は担げないんだから、怪我したら転がして保健室だぞ」

 明るく言った諒に、周りのみんなが笑う。


 三人が出ていくと、ボール遊びをしていた男子たちは、倒れた他の机やいすを片付け始めた。

「宇津木君て、ああいうとこ格好いいよね」

「普段地味だけど、なかなか顔もいいし優しいし」

「実家、医者でしょ? 宇津木君も医者になるのかな」

 あたりにいた女子生徒たちがひとしきり騒いでから、皐月に目を向ける。