見ていると、近くにいた男子たちがなにやら藍たちに話しかける。面白いことでも言ったのか、その場にいたみんなが笑った。それから、藍が男子のうちの一人とじゃんけんを始める。

(3回勝負……おお、藍の勝ちか)

 飛び跳ねて喜ぶ藍と、大げさにがっかりする男子に、周りにいた生徒たちがまた一斉に笑った。


「さんきゅ。助かった!」

 諒の声に振り向くと、今度は諒が外に視線を向けた。

「何見てんの? あ、藍ちゃんじゃん。2組は体育か。寒そう」

「藍の周りって、本当に人が集まるんだな」

「なー。誰とでも仲良くできるタイプだから、自然とそうなるんだよ」

「友達多そうだもんな。藍って、どこ中?」

「あれ? 知らんかった? 藍ちゃんて高校あがるタイミングでこっちに越してきたんだってさ。前はどこって言ってたかなあ」

「え? そうなんだ。知らなかった」