「嫌とかじゃないけど! でも!」

 陽介は周りを気にしてきょろきょろとあたりを見回す。放課後の校舎の中には、人影はない。


「あ、ほら、帰るんだろ!」

 下駄箱に差し掛かって、あわてて陽介は藍の手をほどく。

「うん。じゃあまたね、陽介君!」

 あっさり言って笑顔に戻ると、藍は靴を履き替えて元気に外へと飛び出していった。一見平然とそれを見送る陽介の動悸は、かなり激しいままだ。


 腕にわずかに感じたふくよかな感触。あれは……

 うっかり想像しそうになって陽介はあわてて頭を振ってその考えを追い出す。

「さて! 俺もクラブ行こうかな!」

 誰ともなく大きな声で言って、陽介は部室へと急いだ。



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