「また倒れたら困るだろう」

「大丈夫だってば。先生、心配しすぎ」

 ぷ、と頬をふくらませると、藍は木暮の手を押し返す。

「陽介君、クラブ?」

「あ、うん」

「私もう帰るから、昇降口まで一緒にいこ。じゃあね、先生」


 藍は陽介の腕をとって保健室から出る。ちらりと背後を見た陽介は、木暮の射抜くような視線をまともに見てしまう。

「し、失礼します!」

 それだけ言うと、陽介は保健室の戸を急いで閉めた。




「おい、そんなに早く歩いてて大丈夫なのか?」

 跳ねるように楽しそうに歩く藍に、陽介はおそるおそる聞く。

「大丈夫だよう! 陽介君も、心配しすぎ!」

「倒れたとなれば、誰だって心配するだろう。木暮先生だって……」

「そうねえ。また倒れたら面倒だとか思ってるのかな」

「……仲、いいんだな」

「仲?」

 きょとんとした顔で藍が振り向く。大きな目が興味深そうに陽介をとらえていた。陽介は、少し目線を逸らして呟く。