気圧された陽介の前で、木暮は藍の額に手をあてた。

「どこかだるいところはないか?」

「ん。もうすっかり」

「無理するな。俺が帰るまでここで寝ててもいいぞ」

「いいよお。ちゃんと帰れます」

 やけに親し気な二人の様子をみて、陽介はなんとなくもやもやとした気持ちを感じる。


「先生、あんまり女子にべたべたすんなよ」

「人聞きの悪いことを言うな。べたべたなどしてない」

 そう言って木暮は陽介を振り返るが、その手はしっかりと藍の背に回されている。

「してるじゃん。手。その手」

 女生徒から騒がれる教諭ではあるが、陽介は木暮が他の生徒にそんな風に触れるのを見たことがない。それが少なからず陽介の気に障った。

 そんな陽介に構うことなく、木暮は藍に向き直る。