次の日の放課後、陽介は藍のクラスへと顔を出した。もう一度クラブに誘うためだ。

(あと、夜中に独り歩きするなって言っとかなきゃな)


「あ、平野」

 ドアの向こうに、見知った顔を見つけて陽介は声をかけた。振り向いたのは、平野という女生徒だ。藍と仲が良いらしく、いつも一緒にいるのを見る。


「なに? 宇津木君」

「藍、いる?」

 聞きながらクラスの中をのぞくが、藍の姿は見えない。


「うん、えーと」

 平野は困ったように首をかしげて言った。

「藍、保健室」

「あれ? なんか今日、委員会の仕事あったっけ?」

「ううん。さっき、倒れたの」

「倒れた?!」


「うん。あ、でもいつものだと思うから、大丈夫よ」

 声をあげた陽介に、平野は慌てて付け加えた。だがそう聞いても、陽介は安心などできない。

「いつも? 藍って、そんなに倒れることあるのか?」

「時々。……知らないの? 宇津木君」


 陽介は、せいぜい同じ保健委員会ということくらいしか学校での藍のことは知らない。

(もしかして、藍が昼と夜で違う顔を見せるのもそのせいなのか?)