陽介の言葉に深い意味がないことは重々わかっているが、それでもこりずに胸がはずんでしまう。そうやって無意識のうちに陽介は、度々女生徒に誤解を与えてきた。

 皐月は、陽介に気づかれないように小さくため息をつく。

(そういうこと、私だけに言ってくれればいいのに)

「まずは活動計画作って、先生に申請してみよう。許可がおりるといいんだけど。あ、佐々木先生がいないから、誰か先生に同行してもらわなきゃいけないな」

 顧問の佐々木は3年生の担任だ。陽介たちの修学旅行には同行していない。


「そうねえ。うちの担任は学年主任だから忙しそうだし、各クラス担任以外で修学旅行行く先生って誰がいたかしら」

「先輩、俺たち帰りまーす」

 顔をあげると、先ほどの二人が菓子を食べ尽くして帰り支度を始めている。