「それは、君自身の目で確かめるといい」

 そういうと、三人はエレベーターの前でとまった。

「この、九階だ」

 そして扉をあけると、陽介を促す。エレベーターに乗らずに立たずんだままの二人に、陽介は問いかける。



「一緒にいかないんですか?」

「君の泣き顔を拝めるのも一興だが」

 木暮は皮肉げに笑う。

「この先二人で話す機会などないだろうからな。特別だ」

 それを聞いて陽介は顔つきを引き締める。



 木暮の言葉からは、今の藍がどういう状態なのかわからない。目が覚めたのなら意識はあるだろうが、自分のことを覚えていない可能性もある。藍に会えるのは嬉しいが、同時にそれは天国と地獄のどちらかだ。

 だが、たとえ藍がどういう状態であろうとも、ここまで来たら陽介の取るべき行動は一つだ。



「手紙、ありがとうございました」

 それだけ陽介が言うと、扉がしまった。教授は、隣にいた木暮に話しかける。