廊下の角をいくつも曲がり、カードキーがなければ開かない扉を何度も超えた。すでに、一般病棟とは明らかに場所が違う建物になっている。

「あの、木暮さん……」

「なんだ」

「なんだい」

 陽介が呼ぶと、二人が同時に答えた。



「ああ、そうか。二人とも木暮だからね。私のことは、教授とでも呼んでくれたまえ」

 父親の方の木暮が、軽く笑った。陽介も、笑ってはい、と答える。それからもう一度木暮に向いた。

「約束守ってくれて、ありがとうございます」

 アンドロイドの藍が完全に起動停止した時、陽介は木暮に頼んでいたのだ。

『藍が目を覚ましたら、連絡をください』



 藍は、もうすぐ目を覚ますと言っていた。その言葉を信じて木暮にその連絡を託した。あれから二年になるが、陽介はずっとその時を待っていたのだ。

「あの……それで、藍、さんは」

 二人は、やはり同時に陽介を見つめた。