「申し訳ありません。もう面会時間を過ぎていますので」

 にこやかに、でも決して譲らない笑顔で受付嬢はその事実だけを陽介に伝える。

「あの、ほんの少しでいいんです。5分でいいですから」

 スマホに示された病院に着くも、時間はもう夕刻だった。当然、中に入れる時間ではない。それでも陽介はあきらめきれず、先ほどから押し問答を繰り返していた。



「明日は、午前10時から面会時間です。それ以降にいらしてください」

「でも」

「もう面会時間を過ぎていますので」

 どう言っても、受付嬢の態度は変わらない。

「お願いです。本当に少しでいいので……」

「無理を言うな」

 後ろから声をかけられて、反射的に陽介は振り向く。



「木暮……」

「ほう。年上を呼び捨てとはいい度胸だな」

 皮肉げな笑みを浮かべた木暮は、最後に会った時とあまり変わっていなかった。その後ろには年配の男性が一人立っている。