「じゃ、行ってくる」

「これから会うのか?」

「うん。実は今夜約束してるんだ」

 少し緊張気味に、諒は言った。陽介もリュックを持って立ち上がる。



「皐月によろしく。おめでとって伝えて」

「おめでたくなったら言っとく。だめだったら、お前の胸で泣かせて」

「いいぞ。どんとこい」

 言って二人は笑う。

 誘ったんだから、と諒におごられて、陽介はその背中を見送った。



(そっかー。皐月と諒が、な)

 改めて考えてみれば、お似合いの二人だ。諒の気持ちに気づかなかったというのは、陽介に相当のダメージを与えたが、二人が幸せになってくれるのは陽介にとっては素直に嬉しいことだった。

 見上げた暮れかけの空は、ゆるやかにオレンジ色にかわりつつある。



(藍)

 星を見て、目を輝かせていた少女。

(今、何を見ている?)

 陽介はリュックを背負いなおすと、駅へと向かった。



  ☆