「二人の時間は別に取るからいいよ。また三人で遊びに行こうぜ」

「そういや、今度横浜に飲みに行こうって約束してたっけ」

「ああ、そうだったな。これで俺が振られなかったら、うーん、再来週あたり行くか」

「大丈夫だろ。でも、俺の前でいちゃいちゃすんなよ」

「どうかな。……お前は、彼女とか作んないの?」

 遠慮がちに諒に聞かれて、陽介の頭の中に一人の少女の笑顔が浮かぶ。その顔を見て、諒は陽介の答えを待たずに言った。



「まだ、藍ちゃんの事待ってるのか?」

 高校2年の修学旅行を最後に、藍は陽介たちの学校から姿を消した。表向きは、かねてからの持病が悪化したので療養のため転校したということになっている。同時に木暮も養護教諭をやめてしまったので、真実を知っているのは陽介だけだ。



「あれから、何も連絡ないんだろ?」

「うん。でも」

 陽介は、空のコーヒーカップを見つめる。