「……流れないね」

 夏合宿の観測会で1年生から出た感想とおなじ言葉が、藍の口からも出た。



「まあ、時間も早いし。1時間くらいしか観測できないから、5、6個見られればラッキーかな」

「え、そんなものなの?」

「条件にもよるんだけど、今日の視界だと」

「あっ!」

 きらり、と星が流れた。



「流れた!」

「ん。0.5秒。光度は……」

「そうだ、記録記録」

 藍は、手にした赤い懐中電灯で星図を照らすと今見た流れ星を書き込む。



「これでいい?」

「うん。隣に1って書いておいて。通し番号でこっちと対応させる」

「はい。なんだか、うきうきするね」

 藍は楽しそうに笑った。その笑顔を見つめてから、陽介は、また空に向いた。



「いつもそういう顔していればいいのに」

「ん?」

「ほら、いままで星を見ている時は、いつも無……ええと、表情がなかったからさ。つまんないのかな、と思ってた」

 藍も、同じように空を向く。