「ごめん、諒。私、こんなつもりじゃ……!」

 言いかけた皐月を、諒が抱き寄せた。



「そんな顔、人には見せられないだろ?」

 諒は、皐月の顔を自分の肩におしつけて言った。

「貸してやれるハンカチもないからさ、仕方ない、俺でふいとけ」

「諒……」

「泣いていいよ。俺たち、友達だろ?」

 戸惑うような気配の後、皐月がぼそりと言った。



「それで、一緒に泣いてくれるんでしょ?」

「おう。今の俺は号泣しているからひどい顔だぞ。見んなよ」

 ふふと笑った後、くたりと体から力の抜けた皐月が静かに嗚咽を始めた。

(そうだなよな。惚れた男と友達と……両方いっぺんに無くすのは辛すぎるよな)

 だから、自分の気持ちは胸にしまっておく。今は。

 諒は、泣き続ける皐月の背に置こうとした手を、ぎゅ、と拳に握って、そのまま静かに下ろした。



  ☆