「エゴなんかじゃないよ、皐月。陽介ならきっと、お前を傷つけたことやお前の気持ちに気づかなかった自分を責めて、もう今までみたいに気安い関係なんて持てなくなる。それは、陽介にとってもすくなからず……いや、かなり不幸な事だと思うよ。そ……っか。そうだよな。一番大事な友達をとりあげるなんて……しちゃいけないよな」

「うん。だから、この想いは秘密にしておく。そして、もしいつか、陽介も私も別の人と結婚してお互い幸せに笑っていられる時が来たら、その時は、あの時私も好きだったんだよ、って言えるような気がする」

 そう言った皐月は、微かだけれど笑んでいるように見えた。



「強がってるって、自覚はあるわ。それでも、私、陽介には笑っていてほしい。幸せでいて欲しいの。きっと今頃、陽介、笑ってる。それだけで、私は」

 つい、と皐月の瞳が揺れた。静かな涙がその頬を伝っていく。



「あ、あれ? 大丈夫、って、思ったのに……」

 あわてて皐月はココアをテーブルに置いてハンカチを探す。その間も流れ落ちる涙は、堰を切ったように止まらない。