「諒」

「ん?」

「私、やっぱり陽介に告白するのやめる」

 口にしていたカップを離して、諒は皐月を振り向く。

「なんで?」

「だって、答えはわかっているもの」

 皐月は、じっと手元のココアを見つめている。



「言っても無駄だからやめるのか?」

「ううん、告白することは無駄だと思わないけど……私の、エゴだとは思う」

「エゴ?」

「うん。陽介に好きだって言ったら私はすっきりするかもしれないけど、それは陽介を苦しめる結果にしかならない気がして」

 その言葉に、諒は、は、としたように目を瞬いた。



「今日、陽介が藍ちゃんに向かって走っていった時、すごく悲しかった。行かないでって言いそうになっちゃった。でも、あの後、帰ってきた二人の穏やかな顔を見て、ああ、仲直りしたんだな、と思ったら……胸は苦しくなったけど、同時に、よかったね、とも思ったの。陽介が幸せなら私も嬉しい。これも、本当」

「皐月……」