皐月は、薄暗いロビーの隅にあるソファーに、紙コップのコーヒーを持ったままぼうっと座っていた。本当なら今頃、皐月は陽介と二人で楽しみにしていた流星の観察をしているはずだった。



『疲れちゃったみたいで頭痛がひどいの』

 そう言って、直前で観測会を断ってしまった。陽介は残念がりつつも皐月の体を心配し、ゆっくり休んでと言い残して出かけて行った。



 もちろん、頭痛は観測会を断る口実だ。なんとなくそんな気はしていたが、藍が観測会に参加することになったからだ。さすがに、あの二人と一緒に星を見る気にならなかった。



 もともと皐月は、陽介には悪いがそんなに天体に興味があったとは言い難い。もちろん、星を見るのは綺麗だと思うし、陽介にいろんな話を聞くのは好きだった。けれど、陽介とおなじ熱量で夜空を見上げることは無理だった。



 藍は違う。皐月にはわからない星の話を、二人はできるのだ。

 自分がもっと星に興味を持てたら陽介も自分を好きになってくれただろうか。

 その答えが、Noということも皐月は知っている。

 自分と藍の、何が違ったんだろう。あっという間に、陽介の気持ちをさらっていった少女。いっそ本当に嫌いになれたらよかったのに。