「そうしたら、二人で恋をしよう」

「恋……」

「うん。いつになっても、ずっと未来でも、どんな藍でも。俺の気持ちは変わらない」

 は、と藍が息をのむ。

「俺が藍を好きで、藍も俺を好きって言ってくれたら、俺たちすごく幸せになれると思うよ。藍もそう思わない?」

 涙の止まった藍は、しばらく逡巡したあと、こくり、とうなずいた。陽介は、それで満足だった。

 

「……あのね、私……」

 ためらいながら藍が何か言いかけた時、背後に気配を感じて二人はびくりと振り返る。どうやら近所の人らしく、けげんな顔つきで二人を見ながら横を通り過ぎていった。

 なんとなくそれで我に返った二人は、気恥ずかしさからどちらからともなくお互いに少し離れる。

「あの、今、何か言いかけたか?」

「その……ううん、なんでもない」

 まだ少しだけ憂いを帯びた口調で藍は、目元をぬぐいながらそう言った。

「そう?」