「違うの……私は違う……だめなの……」

「好きになってくれたら、俺は、嬉しい」

 どこまでも柔らかい陽介の声に、藍は両手で自分の顔を覆ってしまう。



「俺のこと、好き?」

「だめ……」

「お兄ちゃん、よりも?」

「私……」

 陽介は、嬉しそうに微笑みを浮かべた。



「好きだよ、藍」

 その言葉に、藍はゆっくりと顔をあげた。濡れた瞳で陽介をみつめる。

「私……っ……私は……でも……」

「無理に答えようとしなくてもいいよ」

 ぱくぱくと口を開けては閉じる藍の、頬に流れる涙を陽介は大きな手でそっとぬぐった。



「今は何か、藍の中でそう言えない事情があるんだろ? でも、いつか言えるようになったら、そうしたら、俺に伝えて。それまで、俺、いつまでも待つから」

 濡れた藍の瞳を、陽介は見つめる。黒目がちの大きな瞳の中に、涙に揺れて陽介が映っている。

(ああ。こんなにきれいな星空は見たことない)