陽介たちと同じく班行動をしていた藍は、振り向いて目を丸くすると逃げるように走りだした。

「待てよ!」

「藍?!」

 一緒にいた平野たちも目を丸くしている。走っていく陽介の後ろ姿を、皐月は唇をかみしめて見送った。



 本当は、気付いていた。今日も一日、班行動の最中にあちらこちらでうちの高校の制服を着た集団とすれ違うたびに、陽介がロングヘアの女子を目で探していたこと。

 今陽介が走っていたのは、その探していた人物をようやく見つけたこと。



「皐月」

 百瀬が気づかうように皐月の肩に手を置いた。皐月は、そんな百瀬に笑顔を向ける。

「さ、ホテル帰ろう。もうすぐ集合時間だよ」

「おう。陽介の奴はどうする? 急にどうしたんだ? あいつ」

 一人、何も知らない小池が陽介の走っていった方を見ながらのんきに言った。



「ほっとこう。子供じゃないんだから勝手に帰ってくるわよ。馬に蹴られちゃかなわないわ」

「え、そうなのか? なんだよ、うまくやったなー、陽介」

「そうね」

 寂しそうに笑う皐月を、諒や百瀬は痛ましそうに見やった。



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