「いいじゃん。宇津木君、今日は皐月をよろしくね」

「ああ。木暮先生もいるし、危険なところにはいかないから」

 よくわかっていない陽介がうなずいた。

「頑張ってね、皐月」

 いろんな意味の感情を込めた声で、久保田が言った。

「う、うん」



 皐月は以前から、自由行動の夜に陽介に告白するつもりだと百瀬たちに告げていた。

 さすがに、修学旅行の前に告白するのはためらわれた。もし陽介にその気がなかった場合、同じ班で行動するのは気まずいことこの上ない。無事に自由行動日を過ごせたら告白しようと、先日までは思っていた。

 けれど、最近の陽介の姿を見ていて、皐月は本当にそれでいいのかわからなくなってしまった。



「まあ、そんなに山奥に行くわけじゃないんだから……」

 笑った陽介が急に立ち上がった。

「陽介?」

 皐月が見上げるより早く、陽介は走り出した。呆気に取られた皐月は陽介の走っていく先を見て、小さく息をのんだ。

「藍!」