「……あの子は怒ってなどいない」

「え?」

 それだけ言うと、木暮はまた資料に目を落としてしまった。

「さっさと部屋に戻りたまえ。そろそろ点呼の時間だ」

「あ、はい」

 ぱたん、とドアを閉めて様子は、そのドアを見つめた。

(怒っては、いないんだ。じゃあ、なぜ……?)

 考えながら、陽介は部屋へと戻った。



  ☆



 修学旅行の二日目は、班ごとにタクシーを借り切っての自由行動だ。陽介と諒、皐月と、他に3人を合わせた6人で班を作って主に嵐山をめぐっていた。



「んー、疲れた。けど、今日は一日が長いわ」

 店の外にしつらえられたベンチに座って、皐月が伸びをした。

「観測する公園って、あそこらへんか?」

 抹茶のソフトクリームを食べながら、諒が目の前に広がる山を眺めている。



「流星群を見るんだっけ」

 同じ班の小池が聞いた。皐月の代わりに陽介が答える。

「ああ。天文部の特別活動だ」

「流星群って言っても、雨あられみたいに星が流れるわけじゃないんでしょ?」

 同じくソフトを食べていた百瀬が首をかしげた。