「ほう」

「医学部って……医者になるってどんな感じですか?」

 真剣な陽介の表情に、木暮はすこし考えてから答えた。



「お前が言ったように、私は確かに研究畑の人間だ。病を診るよりも、病を観察して原因を探り構造を調べる方が性にあっているし興味もある。だが」

 そこで、木暮は言葉を切った。

「お前こそ、医学部に行ってどうするんだ?」

「え? 医者になるって言ってるじゃないですか」

「医者とはどういう存在だと思っている?」

「医者……ですか」

 あらためて聞かれた陽介は、首をかしげて考えた。



「内科とか外科とか……眼科とか耳鼻科とか、部分を受け持つ科もありますが、総じて、病気を治す職業、です」

 それを聞いて、木暮は微かに眉をしかめた。

「どんな病気でも同じだ。病気は、人を苦しめる。お前は、目の前で苦しむ患者を救いたいと思う医者になれるのか?」

 陽介は、は、としたように目を見開いた。片手でがりがりと頭をかく。