「こんなの今更、驚くようなことでも……」

「でも、新聞の記事になるってことは、いつか医療業界から治癒魔法を非難する日が来るかもしれないってこと」


 自分たちの、人の手で患者を治療したいという人たちがいる。

 一方で、世界を探せば私のような治癒魔法を神様から授かる人もいる。

 わざわざ人の手で治療を施す必要はどこにもなく、みんながみんな治癒魔法を頼ってくれたら何も問題は起きない。

 それでも魔法医学業界と、医療業界の人たちは今日も世界のどこかで言い争っているらしい。


「私は……医療業界を滅ぼすほどの力を持つ魔女ってこと?」

「まあ、そんなところ」


 魔法と呼ばれる未知で不思議な力は、いつか滅びてしまうと言われている。


「そんな日が来たときのために、今のうちにたくさんの人からの信頼を集めておこうって話」


 神様が人間に愛想を尽かして、人間に魔法を授けてくれなくなったとか。

 人々が神様から授かった魔法を育てることができずに枯らせてしまったとか。

 魔法が滅びる理由を議論している人たちもいるみたいだけど、議論をしたところで滅びるものは滅びてしまうと誰もが『いつか』が来ることを危惧している。


「俺と一緒に、町医者をやりませんか?」


 私が生きているうちに『いつか』は訪れるかもしれないけれど、もちろんその日が来ない可能性もある。


「悪い話ではないと思うんだけど……」


 それでもクラレッドは新聞の記事になったことで、魔法が滅びる日が近づいているという話が現実味を帯びていると考えた。

 そして、私の元を訪れたということらしい。


「信頼ってものに値はないけど、信頼値を稼ぎまくって、いつかその日が来たときに治癒魔法が害ではありませんよって声を上げてもらう……」


 勢いに乗って私の説得を試みていたクラレッドの視線は明るい未来を向かずに、私の手元に視線を注いだ。


「……クラレッド?」

「……ディアナって、普段からそんなに少食なの?」


 急に話が逸れた。

 これから真面目な話や、これから訪れる未来の話が広がっていくと思っていたら、話は思わぬ方向に飛んでいく。


「……食欲……なくて……」

「もりもり食べる発言はどこ行ったの?」


 聖女追放と婚約破棄という人生を変える大きな出来事が同時に訪れたら、食べなきゃいけない物も口に入っていかないと気づかされる。