(リザと別れて、しばらく経つのに……未だ本の修復が終わらないとか……)


 本が焼けてしまわないように、カーテンを閉めろって思うかもしれない。

 でも、魔法図書館は他人が干渉してはいけない決まりがある。

 この魔法図書館は祖母名義のものだったから、たとえ魔法司書の資格を持っていた人間が図書館にやってきたとしても本を守る力を行使することは禁じられている。


(国に仕えていたからって、僕は万能ではない……)


 祖母が魔法図書館を運営していることを知らなかったおかげで、魔法図書館を相続するまでに時間がかかってしまった。

 それはどうしようもない事実で、どう頑張っても変えようのない現実だけれど、結局は後悔という名前の塊として心に残ってしまう。


(……リザは大きく成長しているのに、僕は……)


 リザと別れてから長い年月が経った今も散在している本は、僕の未熟さを訴えてくる。


(僕は未来に向かって、この本たちをどうにかしなければいけないのに……)


 そして、僕はリザにかけられた呪いを時の流れではなく自分の力で解きたい。 

 
「魔法使いさん」


 本たちが、僕の暗くて後ろ向きがちな考えを断ち切りたかったのかもしれない。

 図書館の換気をしてくれていたリザは空中飛行を既にやめてしまっていて、俯いてしまった視線をリザは掬い上げに現れてくれた。


「とっても楽しかったです」


 特別、本が好きな人生を歩んできたわけではない。

 小さい頃に読んだ絵本や童話の記憶は残っていても、それは今を生きる自分にとって特に大きな価値を見出せるものではない。

 幼い頃に慣れ親しんだ本の内容を、今になって会話として楽しむこともない。


「攻撃魔法も応用すれば、空を飛べるようになるかもしれないですね」


 年齢を重ねるにつれて、1つ1つ魔法が失われていった。

 年齢を重ねるにつれて、便利なものが増えていった。

 それと同時に、僕はリザから遠ざかっていくような気がした。