(魔法使いが魔法図書館に閉じ込められるとか、あり得ないから!)


 開かないものを開くために、魔法はある。

 そう思って、無理矢理こじ開けようとしたのが悪かった。

 開かないものを魔法の力で開こうとしたのが、そもそもの間違い。


「すぅー……すぅー……」


 魔法図書館の出入り口の扉が開いたと同時に、扉を背もたれにして眠りこけていた少女が自分の腕の中に倒れ込んできた。


「え、誰……」


 思わず大声を上げようとしたけれど、自分の口を自分で塞いで漏れ出そうな声を塞ぐことに成功した。

 こんなにも深い眠りに落ちている彼女を自分の声で起こしてしまうなんて、それこそ大罪を犯したかのように罪深いような気がしてしまった。


「…………」

「…………」


 腕の中で、健やかな眠りに就く少女。

 話しかけたいと思っても、話しかけるのを制止させてしまうくらい彼女はぐっすりと眠りに落ちてしまっている。


(まるでリザみたい……っ)


 まるで、リザみたい。

 起こり得るはずのない事態に頭は混乱するけれど、こんなにも無防備に熟睡している彼女は何者か。

 単に彼女が疲れているだけという可能性もあるけれど、何かしらの魔法が作用しているという可能性は否定できない。

 
「リザの顔を確認する方法……」


 真っ先に思いついたのは、新聞。

 一国の姫が婚約したとなれば、新聞の一面を飾っても可笑しくはない……。


「この中から、どうやって目当ての新聞を探せば……」


 誰も訪れない図書館。

 自分だけが、何がどこにあるかを把握していれば困ることはない。

 そんな怠惰な生活は、現在非常に難解な問題をもたらした。