「お世話になりました」

「何かあったら、いつでも戻って来なさい」

「たとえ離れたとしても、ニコは私たちの家族の一員よ」


 リザベッド様は成長されて、魔法を暴走させることもなく、攻撃するための魔法で自分の身を守れるようになった。

 万が一外に出た際に、僕がかけた呪いが発動して眠りに落ちてしまったときにもなんとかできるように教え込んだ。


「リザベッド様にも、よろしくお伝えください」


 だから僕は、姫の傍にいる必要がなくなった。


「任せて! とっておきの小芝居を用意してあるの!」

「国王様……女王様が暴走されないように、よろしくお願い致します……」

「それを楽しんでいる私も私だがな」

「……昔から、大変仲睦まじいですね」


 世間で言われているほど、悪い別れではなかったというのが真実。

 最後の最後を笑顔で終えることができるのは、とても幸福なことだったと思う。


「夢……」


 とても長く、とても懐かしい夢を見た。

 夢というよりは、夢の中で過去の出来事が繰り返されていただけのことではあるけれど。


「今頃……リザは隣国の王子の元に……」


 幼い頃に僕が世話した姫君が近々婚約されるという話は風に乗って流れるに流れ、悲しいことに辺境に地シュテアにも届いてしまった。


「はぁー……」


 ぶっちゃけた話をすると、正直リザベッドの傍を離れたくはなかった。

 別に彼女に呪いをかけたくてかけたわけでは……いや、自分の未熟さが悲劇を招いたことは事実。

 国が処罰を下さないというのなら、自分から辞職を願い出るべきだと思った。

 だから、大切な姫様の成長を見届けたあとに、僕は自分を育ててもらった城を離れた。