きみを想う日々が永遠に続きますように



 クリスマスがおわり、わたしはなんだか吹っ切れた。
 彼のことは変わらず好きだけど付き合いたいとかまた元に戻りたいとか思わなくなった。
 いまはこの関係が続いてほしい。
 お友だちでいるならもう別れることもない。
 たとえ、お友だちでもいいから彼のいちばん近い存在でありたかった。

 そんなときに、わたしにとって衝撃なことが複数起きた。


結蘭(ゆらん)ちゃんもなんか元気ない?」

 太陽くんと一緒に帰る途中、彼が話題を変える。
 萌奈(もな)は、珍しく風邪で休みだった。
 だから、わたしもと言ったのだろう。

「そうかな?」

「なんか無理してるようにみえる」

 べつに無理はしていない。
 ただ、太陽くんは関係ないんだから、元気なくても心配かけちゃだめという想いがある。
 付き合っていた彼のことは一切話していない。
 話す必要もないから、黙っている。


「優しくていいひとじゃなくてもいいんだよ、俺の前だけは」

「え?」

「俺、結蘭のこと好きだから!」

 大きな声で、しっかりと届いた。
 彼からの明確な告白に吃驚(きっきょう)した。

 どうしたらいいのかわからず、戸惑う。

「性格悪いこと言うとさ、うれしいと思った」

「え?」

「結蘭が教室で泣いてたとき、結蘭が悲しい恋をしているからそこに入り込めるチャンスだと思った。
 俺、付き合ったら絶対泣かせない! さみしい想いだって絶対させないから!
 毎日ちゃんと想いを伝えるよ!」

 どんどん声を強調させていく。

 なんでこのひとじゃだめなんだろう。
 太陽くんの告白をきいていちばん最初にこう思った。

 でも、言わないといけない。
 太陽くんは、こんなにも想ってくれているんだ。
 中途半端な態度をとって傷つけていいはずがない。

「……わたし、忘れられないひとがいるの」

 わたしがぽつりと零した言葉に彼は足を止める。
 同じように歩きを止め、真正面に彼を捉える。

「頭ではわかってる。そのひとがもうわたしのこと好きにならないことぐらい。
 痛いくらいわかってるの。なのに、心が追いつかないの。
 まだ、心が進めてないの」

 視界がだんだんと不鮮明になっていく。

「ごめ、ん。ごめんなさい。太陽くんの気持ちには応えられません。
 あと、わたしなんかを好きになってくれて想ってくれてありがとう。うれしいよ」

 深く深く頭を下げた。
 彼の想いに気づくような瞬間はあったはずなのに、見てみぬふりをしていた。
 もう友だちじゃいられなくなるのかな。

「顔、上げて?」

 ゆっくりと視線を元に戻す。

「なんとなく、わかってた。俺じゃ、だめなんだよな」

「……うん、ごめん」

「ほら、もう泣かないで。結蘭ちゃんには笑っててほしいよ」

 呼び捨てから、いつも通りの呼び方に戻り、安心した。
 すると、ほっぺを軽くつねられる。
 その手から、太陽のような暖かさや優しさが伝わってまた泣きたくなる。

「あー俺、フラれちゃったか! はじめてだよ」

 いきなり大きな声を出す。
 通りすがりのひとたちは怪訝(けげん)そうにちらちらと見ていた。
 なのに、太陽くんは、止まらない。

「顔は結構イケメンなほうだと思うけどなー、なんて」

 大きな声で自分でイケメンって言っているところがおかしくて自然と涙が引っ込んでいく。

「あ、よかった。笑ってくれた」

 もしかしてわたしが気まずい想いをしないようにわざとだったのか。
 うれしそうに笑い返してくれた。

「太陽くんはすてきなひとだよ。
 それに、わたしはイケメンだからって理由でだれかを好きにならないよ」

「それもそうだよな! 俺も結蘭ちゃんのこと顔がかわいいから好きになったわけじゃないよ」

「うん」

「あ、もちろん顔はかわいいと思うけどね!」

 イケメンと思うのと付き合いたいとか思うのは別物。
 かわいいも同じだろう。
 外見について思ったことは言えばいいと思うけど、ただそれだけのことなんだから。
 その言葉に意味なんてないのだから。
 結局、中身のほうが大事なのだから。

 そのあとは、告白した雰囲気がうそみたいにふたりで雑談して笑いあった。

 よかった。これならいままで通りお友だちとして仲良くできそう。



「そっか。太陽の告白断ったんだ」

「……うん」

 萌奈に、報告として伝えた。
 どうやら太陽くんの気持ちには、気づいていたそうだ。

「じゃあまだ想ってるんだね」

「……うん」

「付き合ってたときあんなに傷ついたのに?
 それにこの前のクリスマスだって思わせぶりなんじゃないの?」

 萌奈がこんな強い口調で言うのはわたしのことを心配してくれているからだ。
 彼女なりに優しさだってわかっている。

「でも幸せだったあの時間だけはうそじゃないよ」

 付き合ってた頃の時間は幸せだった。
 それだけは決してうそ偽りのない(たし)かな感情だ。
 その幸せだった過去は永遠に残り続けるだろう。

「……そういうえばわたしもそうだったかも」

 萌奈はよくわからない返答をして、悲しそうな顔を一瞬だけみせた。

 どうしたの? と言えなかったのは、萌奈が先生に呼ばれて向こうへ行ってしまったから。


 太陽くんからの告白がひとつめの衝撃なこと。