もう一度、好きというために


 何度も打っては消して、やっと決めた。

 せっかく誘ってもらったんだ。
 それにいっくんとはもう友だちじゃないか。

 今日の放課後、空いてるって返事しよう。


 ピコン

 その音だけで、だれかわかった。

『12月は12日が空いてるよ』

 いっくんからのメッセージ。

 友だちになってからも、月に一度は会う関係が続いている。
 それが、うれしかった。
 苦しいのに、やめられなかった。

 もう一度、通知音が鳴る。

「……え」

 指先が止まる。

『あと、もし空いてたら24、25日も会お?』

 クリスマスイブとクリスマス。

 画面の文字が、やけに繊細に見えた。

 頭が追いつかない。
 でも――
 気づいたときにはもう返信を打っていた。

 考えるよりも先に。
 迷うよりも先に。

 画面の下には、さっきまで打ちかけていた太陽くんへのメッセージが、そのまま残っている。

 ――消せなかった。
 消したら、なにかを決定的に失う気がした。

 それでも。
 わたしは、上の画面だけを見ていた。
 
 いっくんとの、約束だけを。

 太陽くんには、あとでたくさん謝ろう。
 ちゃんと理由も話して。
 ちゃんと傷つけないようにして。

 ――そんなこと、できるわけないのに。

 それでも選んだのは、こっちだった。
 まだ、好きだから。
 ずっと、待っていたから。
 断わられるのが怖くて、自分からは踏み出せなかったくせに。

 誘われた瞬間、全部なかったことみたいに飛びついてしまった。

 ――最低だ。

 それでも。
 やっぱり、うれしかった。





 放課後。
 教室のドアの前で、少しだけ立ち止まる。

 ――今日、言うって決めてた。

 結蘭ちゃんが、まだ残ってるかもしれないと思って。
 でも、中を覗いても、もうだれもいなかった。

 そりゃ、そうか。

 少しだけ苦笑して、スマホを取り出す。

 時間を確認するだけのつもりだったのに、無意識にトーク画面を開いていた。

 最後のやり取りは、昨日のまま。

 クリスマスのこと。
「空いてたら教えて」って言ったきり、まだ、なにも返事はない。

 べつに、すぐに答えがほしいわけじゃない。

 でも、なんとなく、わかる。
 ああいう言い方のときって。

 たぶん。

 ――迷ってるか、断り方を考えてるか。

 スマホの画面を閉じる。
 胸の奥が、少しだけ重い。

 水族館のときも、そうだった。
 あの場所を見た瞬間の、あの顔。
 あれが、どういう意味だったのか。
 いまなら、なんとなくわかる。

 俺じゃないだれかのことを、思い出してた。

 ――そっか。

 小さく息を吐く。

 わかってたはずなのに。
 それでも、期待してしまった自分がいる。

 話すときの距離も。
 笑ってくれるときの顔も。
 全部、優しかったから。

 もしかしたらって、思ってしまった。

 バカだな。

 それでも。

 嫌いになれない。

 だから。

 もう少しだけ、待ってみようと思う。
 答えが来るかどうかじゃなくて。

 自分が、ちゃんと諦められるその日まで。