『結蘭! 今回のテストやばいから教えてくださいー!』
萌奈から、かわいいとスタンプと一緒にメッセージが届いた。
『じゃあ近くの図書館で待ってる』
送信して、スマホを伏せる。
――でも、数秒後、また手が伸びた。
画面を開く。
いっくんからの返信は、まだなかった。
「ありがとう。ほんとにごめんね」
「わたしで教えれるとこならなんでもきいて」
図書館で合流して、端のほうの席へ座る。
人はだれもいなくて、閑静な空間だった。
ページをめくる音だけが、やけに大きく聞こえる。
なのに、集中ができない。
気づけば、またスマホに手が伸びている。
――来てない。
わかってる。
それでも、もう一度確認する。
何度も、何度も。
わかってる。
来てないってことくらい。
それでも、やめられなかった。
「どうしたの?」
顔を上げると、萌奈が覗き込んでいた。
「……忘れられない」
自分でも驚くくらい、あっさり口からこぼれていた。
「……ほんとは、やり直したい」
一瞬だけ、萌奈の目が見開かれる。
でも、すぐに静かに息を吐いた。
「……難しいと思うよ」
やわらかい声だった。
「でも、それでもいいなら、止めない」
「う、うん」
「結蘭が決めたことなら、わたしは応援する」
その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。
「不安なの」
ぽつりと続ける。
「メッセージだけだと、なに考えてるかわかんない」
「うん、そうだね」
萌奈は小さく頷く。
「全部、知ろうとしなくてもいいと思う」
「え?」
「知らないままのほうがいいこともあるよ」
静かな声だった。
「近づきすぎると、壊れることもあるから」
その言葉は、不思議とすっと胸に落ちる。
ーーなんで、この子はこんなことが言えるんだろう。
いつもそうだ。
わたしのほしい言葉を、迷いなくくれる。
なのに。
わたしは、萌奈のことをなにも知らない。



