「結蘭のことずっとすごいと思ってた」
告白することを決めたわたしを、萌奈が駅まで見送りに来てくれた。
その言葉には、羨望が混ざってるように感じた。
「そんなことないよ」
萌奈がいなかったら、きっと決断できなかった。
「失恋したのに、そのひとのことずっと想い続けれるのってすごいことだよ。
結蘭からしたら普通のことかもしれない。けど、だれにでもできることじゃないよ」
彼女の言葉が胸を貫く。
「がんばれ! 結蘭の気持ちしっかり伝えておいで!」
「萌奈、ありがとう! わたしがんばる! もしだめだったら……」
言いかけて首を横にふる。
そんなことはいま考えることじゃない。
「行ってきます!」
萌奈に手をふって、改札口にスマホをかざした。
最後の最後まで、わたしのことを萌奈は見てくれていた。
たくさんの勇気をくれた彼女には、感謝の気持ちでいっぱいだ。
1月29日。
わたしがはじめて彼とメッセージを交わした日。
この日に返事を言うと密かに決めていた。
冬の真夜中は、まるで深海のように静かで暗くて音は絶え果てていた。
こんな時間にごめんね、と前を置きながら、はやる鼓動を抑える。
「あのね、聴いてほしいことがあるの」
だいすきなひとが手を伸ばせば届く距離にいる。
これは決してあたりまえなんかじゃない。
「まだ不安がないといえばうそになるけど、もうわたしは前を向こうと思います。
いまから人生において最初で最期の告白をします」
声が震える。
目を合わせるのもやっとだ。
「好きです! わたしと付き合ってください!」
目を瞑ってその手を取ってくれることを祈る。
まるでひとりだけ世界から取り残されてしまったかのようになにも聞こえない。
自分の鼓動の音しか聞こえない。
「お願いします」
その声とともに顔をあげると、思いっきり抱きしめてくれた。
彼の瞳にももう迷いは存在していなかった。
そして、耳元で「だいすき」と囁いてくれた。
すごく安心したし、うれしかったのをいまでも鮮明に憶えている。
喪う前に伝えることができてよかった。
心から安堵した。
水族館は、わたしたちのはじまりの場所だった。
そして偶然なのか、必然なのか。
2回目のはじまりも水族館だった。
ほんとは別日にいく予定だったが、天候で延期され今日、告白した日にずれ込んだ。
場所は違えど、あのときとおなじような観覧車が隣にある。
そして、くるくる回る観覧車の中、再びキスを交わした。
あのとき、感じたドキドキをまた感じた。
なにか縁のようなものを感じ、運命って本当にあるのかもしれないと舞い上がった。
「これから末永くよろしくお願いします」
「こちらこそ」
まるで、はじめて付き合ったかのような感覚だった。
ここからまたわたしたちの関係がリスタートした。
恋人じゃなくなった日から209日。
今度こそ、適度な距離感を大切にお互いを支え合えるように過ごして生きたい。
萌奈に復縁したことをいちばんに伝えた。
彼女は自分のことのように喜んでくれた。
「諦めなくてよかったね。結蘭の想いがちゃんと届いてよかった!
結蘭が悩んで出した答えが正解だよ」
「それは……萌奈がいてくれたから。ありがとう」
「こちらこそだよ!」
萌奈はいつでもわたしのことを考えて、適切な言葉をくれた。
いつまでもだいすきな親友だ。
太陽くんとも変わらずお友だちとして仲良くやっている。
ふったのに友だちでいたいなんて、わたしの自分勝手な想いを酌みとってくれたのだ。
「水族館いったんだー! たのしそう」
「たのしかったよ! ほら、これみて!」
スマホをみて、この前の想い出を語る。
ペンギンやサメにイルカ。
次々と写真を共有していく。
「……よかった。結蘭ちゃんが幸せなら俺もうれしい」
「ありがとう!」
太陽くんは、いつでもわたしを想ってくれた。
優しくて、大切なお友だちだ。



