「ねえ、あなたのことほんとに大好きだったよ」
いつか笑って過去を話せるようになるまで。
あれから気づけば、数ヶ月が過ぎようとしていた。
いっくんは言葉通り、わたしとの縁を切らないでいまでも友だちとして接してくれている。
それがうれしかったり、ちょっと悲しかったり。
「結蘭ちゃん!」
「あ、太陽くん! おはよー!」
わたしを見るなり、元気に声をかけてくれた彼に笑顔を返す。
太陽くんは萌奈と同じ塾に通っている隣のクラスの男の子。
名前通り太陽みたいな明るさで暖かい人だ。
最近は学校行事とかで関わることがあり、仲良くなれた。
「ねぇ、昨日のアニメみた?」
「あ、みたみた!」
わたしが元気よく頷くとにっこりと微笑んだ。
アニメが好きという共通があって話もすごく合う。
それはたのしいしうれしいことなのに、男の子と話す度脳裏に彼、いっくんの顔が過ぎる。
わたしはまだ前を向けていなかった。
いまでも付き合っていた頃のことばかり想い出してしまう。
それはまるで想い出の中を生き続けてるだけだ。
はやく前に進めないといけないのに。
「もうすっかり仲良さそうね!」
「あ、萌奈!」
彼女はスマホを片手に壁にもたれながらわたしたちの姿を微笑ましそうに眺めていた。
「じゃあ、太陽くん。またね」
「また!」
隣の教室へ入っていく彼をふたりで見送り自分たちの教室の中へ戻った。
「結蘭が前に進めてるみたいでうれしいよ」
だれにも聞こえないような声で耳打ちする。
「……そうだね!」
ほんとは全然前に進んでるわけじゃなかったけど悟られないように笑った。
まだ想いは消えてない。
まだ。
「あれ、別れたあとで一度あったのよね?」
「うん。いまは……お友だちかな」
「友だちに戻れるのって素敵なことだよ!」
そう言いながら、微笑む。
あまりにも強いまなざしで言われたからこの選択に少し自信がもてた気がする。