彼氏いない歴=年齢(17)
の八代由奈(やしろ ゆな)は常日頃。
「自慢出来る彼氏が欲しい」
と嘆きつつ、男性に対し、
高い理想を掲げていた。
由奈には昔から強い、強い、
”偏見”があるのだ。
由奈が男性に対し掲げる高い理想とは、
(顔がかっこいい、
というのは大前提にあるとして)
まず。髪型。
近年では黒髪マッシュが流行っているので
まず、そこは、絶対に、欠かせない。
身長も大事だ。
近年では一般的なカップルの身長差は
10センチ前後が最適らしいので。
160センチの由奈の隣に並ぶには
少なくとも170センチは欲しい。
そして服装。
うーん。まぁ服装に関してはこれ
ってやつは思い浮かばないが
ひと目見た時に、
「うわ、無理」ってならなければいい。
ちなみにそこら辺を歩く男の大半は
「うわ、無理」と、なっている。
だからその”大半”に属していなければ
良い。
あ。あと───────……
てな感じで自分では全然”そんなつもりない”が
由奈の理想は高いらしく、
友達の紗枝はいつも呆れ顔だ。
そんな時。
「ねぇ。そんなに彼氏が欲しいなら
由奈もこのアプリ入れてみたらー?」
「何それ」
紗枝が見せてきたスマホ画面の隅の方には
ピンク色の背景に
シンプルなハートマークが描かれている
可愛らしいアイコンがあった。
「【cupid(キューピット)】!
今みんな入れてるよ!」
「きゅー、ぴっと、?」
”みんな”という言葉は便利なもので、
みんなが使っているなら。
由奈の興味は10割増で湧いた。
「そう!いわゆるマッチングアプリ!
私の友達さ、みんなこのアプリで
チョーイケメンの彼氏出来たんだよー」
「え、まじ?」
みんなにチョーイケメンの彼氏が出来たなら。
由奈の興味は100割増で湧いた。
”みんな”という言葉もそうだが、何より
”チョーイケメンの彼氏”
そんなキラキラとしたワードが
決め手だったように思う。
自分で言うのもなんだが、そう。
私はチョロい。
そんな紗枝の巧みな術にはめられ、
由奈は一瞬にして
この【cupid(キューピット)】
というアプリに興味を持った。
それに。
知らない場所には基本的にビビって行きたくないタイプの由奈をいつも知らない所に連れ出してくれるのは紗枝で。
由奈にとって紗枝は知らない世界を
教えてくれるような、いわば
ガイドのような存在なのだ。
そんな紗枝がそこまで勧めてくるならば。
「えー、じゃあインストールしてー」
自分のスマホを取り出し、紗枝に渡す。
由奈は最初の登録云々は全て紗枝に任せる事に。
「まず、登録して…っと。」
隣で必死にパスワードなどを打ち込む紗枝を横目に由奈はさっき食堂で買ったオレンジジュースを優雅に啜った。
しばらくすると紗枝が「はい」と言って
全て登録し終えた由奈のスマホを差し出してきた。
そこには
──────────────
♡ユナ♡
【フォロワー1/フォロー中1】
──────────────
と表示されていた。
紗枝の独断で、
名前の両サイドに♡マークを
付けられている事はさておき、
由奈は疑問に思う。
「1、って?」
普通、始めたては0のはずだ。
なんだこの1は。誰だ。
「あ〜っ、最初の”1人”は
アプリ側が自動で決めるの。で。
最初の1ヶ月はこの人としか会話出来ないの」
「え〜……、長。どんな人?」
1ヶ月この人としか会話出来ないのは辛。
まぁイケメンだったら全然いいけど。
素性を知りたくて
吸い込まれるように
「1」をタップした私は……
「これさ……」
顔を顰めた。
「爺さんじゃない?」
──────────────
二郎
【フォロワー1/フォロー中1】
──────────────
きっと向こうも始めたて、なんだろう。
向こうのフォロワーもフォロー中も
♡ユナ♡だけだった。
と、まぁ、それはさておき。
デカデカと画面いっぱいに表示された
二郎のアイコンは縁側の写真を使っていた。
だからどう考えても爺さんだと思った。
めちゃくちゃ偏見だが
由奈の中では縁側=爺さんなのだ。
まぁどちらかと言えば
婆さんの可能性の方があると思う由奈であったが
紗枝は♡ユナ♡を「女」で登録した為、
婆さんとマッチングする事はないだろう。
よって、こいつは爺さん。
てか名前からして爺さんか。
ちなみに♡ユナ♡のアイコンは
今そこで紗枝が、ぱぱっと撮った
空の写真になっている。
「分かんないよー?イケメンかもよー?」
「ないない」
由奈の中では
イケメンのアイコンは大体”後ろ姿”なんだ。
偏見まみれの由奈はその時点で酷く落胆した。
縁側をアイコンにする奴はもう100%
若者では無いだろうし、
きっとろくな奴じゃない。
(もしアイコンを縁側にしている人がいるならすみません)と心の中で謝りつつ由奈はうーん、と伸びをした。
別に縁側の写真にする事自体は良いが、
由奈の彼氏になるには、という意味で
軽くディスっているだけなのだ。
の八代由奈(やしろ ゆな)は常日頃。
「自慢出来る彼氏が欲しい」
と嘆きつつ、男性に対し、
高い理想を掲げていた。
由奈には昔から強い、強い、
”偏見”があるのだ。
由奈が男性に対し掲げる高い理想とは、
(顔がかっこいい、
というのは大前提にあるとして)
まず。髪型。
近年では黒髪マッシュが流行っているので
まず、そこは、絶対に、欠かせない。
身長も大事だ。
近年では一般的なカップルの身長差は
10センチ前後が最適らしいので。
160センチの由奈の隣に並ぶには
少なくとも170センチは欲しい。
そして服装。
うーん。まぁ服装に関してはこれ
ってやつは思い浮かばないが
ひと目見た時に、
「うわ、無理」ってならなければいい。
ちなみにそこら辺を歩く男の大半は
「うわ、無理」と、なっている。
だからその”大半”に属していなければ
良い。
あ。あと───────……
てな感じで自分では全然”そんなつもりない”が
由奈の理想は高いらしく、
友達の紗枝はいつも呆れ顔だ。
そんな時。
「ねぇ。そんなに彼氏が欲しいなら
由奈もこのアプリ入れてみたらー?」
「何それ」
紗枝が見せてきたスマホ画面の隅の方には
ピンク色の背景に
シンプルなハートマークが描かれている
可愛らしいアイコンがあった。
「【cupid(キューピット)】!
今みんな入れてるよ!」
「きゅー、ぴっと、?」
”みんな”という言葉は便利なもので、
みんなが使っているなら。
由奈の興味は10割増で湧いた。
「そう!いわゆるマッチングアプリ!
私の友達さ、みんなこのアプリで
チョーイケメンの彼氏出来たんだよー」
「え、まじ?」
みんなにチョーイケメンの彼氏が出来たなら。
由奈の興味は100割増で湧いた。
”みんな”という言葉もそうだが、何より
”チョーイケメンの彼氏”
そんなキラキラとしたワードが
決め手だったように思う。
自分で言うのもなんだが、そう。
私はチョロい。
そんな紗枝の巧みな術にはめられ、
由奈は一瞬にして
この【cupid(キューピット)】
というアプリに興味を持った。
それに。
知らない場所には基本的にビビって行きたくないタイプの由奈をいつも知らない所に連れ出してくれるのは紗枝で。
由奈にとって紗枝は知らない世界を
教えてくれるような、いわば
ガイドのような存在なのだ。
そんな紗枝がそこまで勧めてくるならば。
「えー、じゃあインストールしてー」
自分のスマホを取り出し、紗枝に渡す。
由奈は最初の登録云々は全て紗枝に任せる事に。
「まず、登録して…っと。」
隣で必死にパスワードなどを打ち込む紗枝を横目に由奈はさっき食堂で買ったオレンジジュースを優雅に啜った。
しばらくすると紗枝が「はい」と言って
全て登録し終えた由奈のスマホを差し出してきた。
そこには
──────────────
♡ユナ♡
【フォロワー1/フォロー中1】
──────────────
と表示されていた。
紗枝の独断で、
名前の両サイドに♡マークを
付けられている事はさておき、
由奈は疑問に思う。
「1、って?」
普通、始めたては0のはずだ。
なんだこの1は。誰だ。
「あ〜っ、最初の”1人”は
アプリ側が自動で決めるの。で。
最初の1ヶ月はこの人としか会話出来ないの」
「え〜……、長。どんな人?」
1ヶ月この人としか会話出来ないのは辛。
まぁイケメンだったら全然いいけど。
素性を知りたくて
吸い込まれるように
「1」をタップした私は……
「これさ……」
顔を顰めた。
「爺さんじゃない?」
──────────────
二郎
【フォロワー1/フォロー中1】
──────────────
きっと向こうも始めたて、なんだろう。
向こうのフォロワーもフォロー中も
♡ユナ♡だけだった。
と、まぁ、それはさておき。
デカデカと画面いっぱいに表示された
二郎のアイコンは縁側の写真を使っていた。
だからどう考えても爺さんだと思った。
めちゃくちゃ偏見だが
由奈の中では縁側=爺さんなのだ。
まぁどちらかと言えば
婆さんの可能性の方があると思う由奈であったが
紗枝は♡ユナ♡を「女」で登録した為、
婆さんとマッチングする事はないだろう。
よって、こいつは爺さん。
てか名前からして爺さんか。
ちなみに♡ユナ♡のアイコンは
今そこで紗枝が、ぱぱっと撮った
空の写真になっている。
「分かんないよー?イケメンかもよー?」
「ないない」
由奈の中では
イケメンのアイコンは大体”後ろ姿”なんだ。
偏見まみれの由奈はその時点で酷く落胆した。
縁側をアイコンにする奴はもう100%
若者では無いだろうし、
きっとろくな奴じゃない。
(もしアイコンを縁側にしている人がいるならすみません)と心の中で謝りつつ由奈はうーん、と伸びをした。
別に縁側の写真にする事自体は良いが、
由奈の彼氏になるには、という意味で
軽くディスっているだけなのだ。