――これは現世(うつしよ)何処(どこ)かに存在すると伝えられてきた、(いにしえ)(ことわり)が息づく別世のお(はなし)


 そこに生きる人族の民は、八百万(やおよろず)の神々を崇め、(あやかし)(おそ)れる暮らしと共に()った。
 その中でも、彼らを(まつ)り、鎮める(やしろ)(つかさど)る一族に生まれ、特異な能を持つ人族の女は『尊巫女(みことみこ)』と呼ばれる。
 彼女達は、十八になると神々の住む神界に向かうという慣わしが、遥か昔からあった。雨()ぶ巫女は龍神界、陽をもたらす巫女は稲荷界へ行き、彼らの神力を借りる梯子(はしご)と成るのが生まれながらの役目、責務である。
 神族と人族の混血である、その地を()べる其々(それぞれ)(おさ)に認められれば、子孫繁栄の為の伴侶となる。否な場合は贄となり、その地の一族に喰われて力を吸収されるという、至極、酷な因習、慣わしだった。


 ――全てを諦め、搾取される事を存在意義に生きていた女は、
 放置という名の歪な自由と思慮を得て、自身を知った。

 ――全てを嫌悪し、忌み嫌われる力を虚しく感じていた厄神は、
 少しずつ息を吹き返す花に安らぎを得て、情愛を知った。

 『再生』と『破壊』――両極の能持つ孤独な二人が歪に出逢い、恋におちた先は……