掃除が終わって、部活動の時間になる。

相変わらず、2年生の先輩方はスマホを見て笑っている。

顧問にばれていないみたいだからいいけれど、ばれたらどうなるんだろう。

そんなことを考えて息を殺しながら部室のカメラを手に取る。

このカメラは前に桃野先輩が使っていたものらしい。

黒いデジタル一眼レフ。

すごくきれいに映るし、使いやすいからすごく気に入っている。

カメラを手に取ったらすぐさま部室を出る。

気のせいかもしれないけれど、私が部室に入ると先輩が話している内容が全部私のことをよく思っていないような話に聞こえる。

静かに扉を閉めて、カメラを肩にかけてポケットにメモ帳と愛用しているボールペンを入れる。

同じ校舎内にある音楽室へと足を運んでいると、トロンボーンを持った浅草先輩が向かってきた。

やっぱり、トロンボーンだった。

なんとなくそんな雰囲気があったから勝手にトロンボーンだと思っていたけれど、本当にトロンボーンだったんだ。

「映優ちゃん!今日は撮影よろしくね、これ、各パートの練習場所と今日の練習内容書いてあるから、よかったら使って!」

「ありがとうございます、今日はよろしくお願いします!」

「各パートのパートリーダーに撮影されること言ってあるからどのパート行っても大丈夫だよ。帰るときは一声かけてほしい!」

「わかりました、ありがとうございます!」

「じゃあ練習行くね、またあとで!」

浅草先輩が早歩きで練習場所に向かう。

急いでいるのかな、時間取ってしまって申し訳ないな、あとでお礼して謝っておこう。

遠くなっていく浅草先輩の背中を眺めながらそう考える。