柊木さんは首を傾げる。

「失敗って?」
「シュートとか、パスミスとか……」

 聞かれたから答えてみるけど、意外と出てこない。

 私はこの程度のことを怖がっていたのか。

「シュート失敗したくらいで、責めないから」

 近くで聞いていた浅見さんこそ、クールに言った。

「そんなので責めてたら、自分の足につまずいてこけた詩織(しおり)はどうなるの」

 浅見さんが言うと、柊木さんは顔を赤くする。

「由紀ちゃん、やめてよ、そんなはっきり言わないで。恥ずかしいんだから」

 私は柊木さんがケガをした瞬間を見ていなかったから、その原因を知って、驚かずにはいられなかった。

「いや、少しね、少しだけ、運動が苦手なだけなんだよ。だから、本当に古賀さんに出てもらえると、嬉しいなって、ちょっとだけ思ってたりする……」

 照れて笑う柊木さんは、とても可愛らしい。

 そして柊木さんは、私の前に立つ。

 私よりも背が低い柊木さんは、私を見上げて優しく笑いかけてくれた。

「全力で応援してるね。頑張って」

 柊木さんの笑顔を見ていると、私は受け入れられたのだと思えた。

 柊木さんだけではない。

 私に拒絶するような視線を向ける人は、ここにはいなかった。

 たったそれだけのことなのに、私は泣きそうになる。

 柊木さんの言葉に答えられないでいると、咲楽が私の背中に触れた。

 咲楽の微笑みが、“よかったね”と言ってくれているような気がした。

「ありがとう。柊木さんの分まで、頑張るよ」

 そして前の試合が終わり、私たちはコートに入る。

 第一試合のときのより、気持ちが軽い。

「依澄、大丈夫?」

 だけど、さっきの試合では思いっきり停止してしまったから、咲楽の不安は消えていないらしい。

「意外と大丈夫。勝つことも大事かもしれないけど、今は大好きなバスケを、全力で楽しみたい」

 そう答えると同時に、試合開始を告げる笛が鳴る。

「ぶちかましてやろうぜ、親友」
「なにそれ」

 お互いに笑い合い、私たちはポジションにつく。

 そっと目を閉じて、ゆっくりと息を吸い、目を開いた。

 いい緊張感だ。

 今回のジャンプボールは、私たちのチームが取った。

 咲楽の元にボールが行き、咲楽はドリブルで攻めていく。

 私はそのペースより少し速めに走り、ゴール下に向かった。

 空いている場所を探り、咲楽からパスを受け取る。

 失敗するビジョンは相変わらず過ぎる。

『古賀が失敗しても、誰も責めない』

 夏川先輩の言葉を信じて、私はボールを投げた。

 そのボールはゴールに弾かれた。

「依澄、もう一回!」

 素早くボールをキャッチした咲楽が、また私にボールをパスした。

 さっきのは惜しかったんだ。次は、大丈夫。

 自分に言い聞かせて放したボールは、今度こそゴールに吸い込まれた。

 咲楽は私に駆け寄ってきて、抱きついた。

「ナイスシュート」

 私は咲楽とハイタッチをする。