「よし、完成。依澄、記念写真撮ろう」

 咲楽は私に顔を近付けると、左手にスマホを持って手を伸ばし、位置を調整してシャッターを押した。

 撮られるのはニガテだと言い続けてきたけど、夏川先輩に撮られることが増えたからか、私は自然に笑うことができた。

 そして、私たちは体育館シューズを持って移動する。

 すでに体育館にいる人たちが練習を始めているようで、聞き慣れたドリブルの音が聞こえてきた。

 心が踊るような、怯えているような、不思議な感覚だ。

 足の裏が地面に引っ付いてしまいそうになると、咲楽がそっと私の右手を握った。

 その眼は心配そうに私に向けられている。

「大丈夫だよ」

 無理矢理笑って言ったそれは、自分に言い聞かせているようなものだった。

 当然、無理していることは咲楽に伝わっていただろうけど、咲楽は「よかった」と流してくれた。

 体育館シューズに履き替え、体育館に入る。

 クラスマッチだからか、私の知っている熱気とは違うものが、そこにはあった。

 ドリブルをして、シュートをしようとして、外れる。

 次に聞こえてくるのは、笑い声。

 ああ、そうか。これは真剣勝負ではなく、お祭りなんだ。

 そう思うと、一気に心が軽くなった。

 私たちは壁際に寄って、クラスメートが集まっている舞台側に移動する。

「私たちの試合って、一試合目だったよね」
「うん。たしか、二年と戦う」
「先輩か……ちょっと怖いけど、頑張ろうね」

 私は会話に入れなかった。

 バスケがイヤだという気持ちのせいで、今日までチームメイトになることすらできていなかった。

「依澄、私の活躍を見逃さないでね」

 疎外感を抱いている私に気付いたのか、咲楽は私にそう言った。

 今日の咲楽は、ちゃんとスポーツ仕様だ。

 気合いが入っているらしい。

「もちろん。頑張ってね」

 補欠である私にできることは、そんな咲楽を応援することだけだった。

 それからすぐに、コートに集まるように指示が出て、咲楽たちはコートに入る。

 コート中心に背の高い二人が並び、笛の合図とともに、審判がボールを真上に投げた。

 ジャンプボールは、二年生に取られた。

 ボールを取った先輩がドリブルをして攻めてきて、一年生チームはそれを邪魔する。

 そしてシュートは失敗し、跳ね返ったボールを咲楽が取った。

「咲楽、ドリブル! 攻めて!」

 大きな声なんて、久しぶりに出した。

 咲楽がドリブルをして相手ゴールを目指すと、コート内にいる全員がそれを追う。

 中学時代、数ヶ月しかバスケ部に所属していなかったにも関わらず、咲楽の動きは軽やかで、誰にも追いつかせることなく、ゴール下に辿り着く。

 咲楽が投げたボールは綺麗な放物線を描いて、ゴールに吸い込まれた。

 咲楽はチームメイトとハイタッチをし、私に向けてピースサインをする。

 ポジションはめちゃくちゃだし、作戦なんてない試合だけど、こうして応援していると、不思議と楽しくなってくる。

「氷野、いい笑顔だね」