「面倒な制度が、解禁されたな」

学校へ向かいながら、私は、スマホで『一妻多夫制度 解禁』を検索する。

「何これ……?」
 
主に夫婦における婚姻制度の改正である。夫婦の定義として一緒に生活する男女の共同体であるが、この男女は、夫1人、妻1人で無ければならないという項目を撤廃し、妻1人に対して夫は3人まで共に生活をする共同体として認める事とする。また生まれた子供は、家庭単位で、長子、次子という様に戸籍に登録され……。


難しい文言を飛ばし読みしながら、私は眉を寄せた。

(要は、ママにはあと2人旦那さんができても良いということか)

一妻多夫制を、希望する家庭は、インターネットの、政府のホームページからご希望の男性の職業、年代、年収をご記入の上、送信してください。ご希望の男性が見つかり次第個別にメールにてご連絡致します。

(あ、これか。ママが、隣に住む神田おばさんも申し込みしたっていってたやつ)

私は、スマホをポケットに仕舞うと顔を顰めた。

30年ほど前の世界的パンデミックにより、この国の男女比率のバランスが大きく崩れ、一時期は、ほぼ男しか生まれなかったらしい。現在も男女比は、8対2だというから驚きだ。当然ながら、主に男性未婚率は80%を超え、少子化に拍車をかけていた。

そんな背景から、もはや結婚は、男の一つのステータスとなっている。経済力やスペック、さらには、性格、容姿全てを兼ね備えた、国民ピラミッドの頂点にランクインされる男のみが、結婚ができ、子孫を残す事ができるのだ。

(面倒な制度。要は、子供増やしたいだけでしょ……それも女)

私は、近いうちにやってくる新しい尚子の旦那を憂うと、大きくため息を吐き出した。