チャンスがまったくなかったと言えば嘘になる。
ありがたいことに自分にアプローチをしてくれる男性も何人かいた。彼らは皆親切で、絶対に私を傷つけるようなことはしないだろう、と思えるような良い人たちばかりだった。
でも、いざ告白をされると直感で「違うな」と感じてしまう。
人によっては、「付き合ってから好きになる」「告白してくれた人を好きになる」「好きじゃなくても付き合っちゃう」という女の子がいるが、私には当てはまらない。
私は、完全に自分が相手のことを好きな状態ではなければお付き合いすることができないタイプだった。
「ごめんなさい」
こんなにも良い人が私なんかを好きになってくれた。それなのに断らなければならない状況に、「ごめんなさい」の一言では済まされないとは思う。けれど大抵の人は「そっか」と私の意思を尊重してくれた。
一度、告白はされるのにあまりにも恋人ができない私に、友達がアドバイスしてくれたことがあった。「いっぺん付き合ってみれば?」と。
人間関係や将来のこと、いろいろなことに迷っている時期だった。周りの友達は付き合って○年という恋人がいて、なんだか自分が世界から置いてきぼりをくらっているような感覚に陥っている。
「そうだね。それもありかも」
好きじゃないのと付き合えない体質の私が、友達からのアドバイスを甘んじて受け入れていた。
そして、彼女の言う通り告白をしてくれた男の子と付き合ってみることに。
同じアルバイト先の同級生の男の子だった。とても誠実で頭も良く、寡黙だけれどモテそうだなと思わせるクールな雰囲気を持ち合わせている。同じ大学で気が合うし、いいなと思ったのは事実だ。
デートだって人並みに行った。ご飯を食べたり一日神戸で遊んだり、お家でまったりしたり。どの瞬間も優しくて、たぶん私にはもったいない人だった。
でもやっぱり、付き合っていくにつれ、「私はこの人のこと、本当に好きなんだろうか」という気持ちが付き纏った。
あまりにも気持ちが凪いでいて、あの燃えるような高校時代の恋とはまったく違っていた。それでも「異性として好き」という感情があれば良かったのだが、彼に対する気持ちは「友達として好き」に他ならなかった。
自分が最低すぎて、バカだと思い悩む日々。思い出すのはやっぱり桐生陸との甘ずっぱい思い出。
あの頃の気持ちに、今の私はなれていない。
そう分かった途端、もうこれ以上は私のわがままに付き合ってもらってはダメだと痛感する。私は彼に、何の落ち度もない彼に、サヨナラを告げる。ほんの数ヶ月間の付き合いだった。
どうして別れてからも、私を苦しめるの?
どうして前に進ませてくれないの?
一つの恋が終わると、必ずあの人のことが頭に浮かんで。本当の戦いはまだ終わっていなかったのだ。一人暮らしの部屋の中で、布団にくるまってひたすら夜が明けるのを待った。
手慰みにネットニュースを見て、二人で行った地元の花火大会が資金不足でなくなったということを知った。少し前には地元の遊園地も閉鎖に追い込まれた。そこにもデートの思い出がある。もう遠い記憶なのに、二人でいた事実がさらに幻のように薄れていく気がして辛かった。
たまに自分から好きになれる人も現れたけれど、その人は逆に私のことを好きにならない。仕方ない。そう簡単に両思いになんかなれるわけがないのだ。分かっている。だからこそ、思い出してしまう。もう一度あの人に会いたい。でもきっとあの人は私になんか絶対に会いたくない。そもそも、私のことなんか忘れてしまっただろう。連絡先からも消されてしまっているのだから。
夢の中に、何度も桐生陸が現れた。夢の中の彼は大抵新しい彼女と幸せそうに笑っている。私は彼に謝りに行く。あの時は本当にごめんなさい。苦しめてごめんなさい。別れた直後、私は自分が悲劇のヒロインだった。でも、彼が私に別れを告げるのに十分なほどに、私は知らないうちに彼のことを困らせてしまっていたのだ。だから夢の中で会えた彼に、ひたすらごめんねを繰り返す。
彼は別れる時に理由を言わなかったけれど、元来マイナス思考な私に嫌気がさしたのだと分かっていた。だから大学生になってからというもの、明るく振舞うように努めていたのだけれど、心が弱っている時はどうしてもダメだった。また元の弱虫な自分に戻ってしまう。あなたを思い出してめそめそ泣いてしまう。
あんなに傷ついた恋だったのに、私は彼のことがこんなに好きだったんだ。
私と彼はもう、どうしたって交わらない。同じ空の下で息をしているはずなのに、ねじれの位置で生きている。もう会えないということは、死んでしまったのと同じようなものだ。
会いたい、でも会ったところで突き放されるのは見えている。
だから会わない方がいいのだ。
一生、会わない方がいい。
帰省すると、どこかに彼がいないかと探してしまう自分がいる。
東京に遊びに行くたびに、彼とすれ違っていないかと確認する自分がいる。
そんな自分と、早く決別したかった。
ありがたいことに自分にアプローチをしてくれる男性も何人かいた。彼らは皆親切で、絶対に私を傷つけるようなことはしないだろう、と思えるような良い人たちばかりだった。
でも、いざ告白をされると直感で「違うな」と感じてしまう。
人によっては、「付き合ってから好きになる」「告白してくれた人を好きになる」「好きじゃなくても付き合っちゃう」という女の子がいるが、私には当てはまらない。
私は、完全に自分が相手のことを好きな状態ではなければお付き合いすることができないタイプだった。
「ごめんなさい」
こんなにも良い人が私なんかを好きになってくれた。それなのに断らなければならない状況に、「ごめんなさい」の一言では済まされないとは思う。けれど大抵の人は「そっか」と私の意思を尊重してくれた。
一度、告白はされるのにあまりにも恋人ができない私に、友達がアドバイスしてくれたことがあった。「いっぺん付き合ってみれば?」と。
人間関係や将来のこと、いろいろなことに迷っている時期だった。周りの友達は付き合って○年という恋人がいて、なんだか自分が世界から置いてきぼりをくらっているような感覚に陥っている。
「そうだね。それもありかも」
好きじゃないのと付き合えない体質の私が、友達からのアドバイスを甘んじて受け入れていた。
そして、彼女の言う通り告白をしてくれた男の子と付き合ってみることに。
同じアルバイト先の同級生の男の子だった。とても誠実で頭も良く、寡黙だけれどモテそうだなと思わせるクールな雰囲気を持ち合わせている。同じ大学で気が合うし、いいなと思ったのは事実だ。
デートだって人並みに行った。ご飯を食べたり一日神戸で遊んだり、お家でまったりしたり。どの瞬間も優しくて、たぶん私にはもったいない人だった。
でもやっぱり、付き合っていくにつれ、「私はこの人のこと、本当に好きなんだろうか」という気持ちが付き纏った。
あまりにも気持ちが凪いでいて、あの燃えるような高校時代の恋とはまったく違っていた。それでも「異性として好き」という感情があれば良かったのだが、彼に対する気持ちは「友達として好き」に他ならなかった。
自分が最低すぎて、バカだと思い悩む日々。思い出すのはやっぱり桐生陸との甘ずっぱい思い出。
あの頃の気持ちに、今の私はなれていない。
そう分かった途端、もうこれ以上は私のわがままに付き合ってもらってはダメだと痛感する。私は彼に、何の落ち度もない彼に、サヨナラを告げる。ほんの数ヶ月間の付き合いだった。
どうして別れてからも、私を苦しめるの?
どうして前に進ませてくれないの?
一つの恋が終わると、必ずあの人のことが頭に浮かんで。本当の戦いはまだ終わっていなかったのだ。一人暮らしの部屋の中で、布団にくるまってひたすら夜が明けるのを待った。
手慰みにネットニュースを見て、二人で行った地元の花火大会が資金不足でなくなったということを知った。少し前には地元の遊園地も閉鎖に追い込まれた。そこにもデートの思い出がある。もう遠い記憶なのに、二人でいた事実がさらに幻のように薄れていく気がして辛かった。
たまに自分から好きになれる人も現れたけれど、その人は逆に私のことを好きにならない。仕方ない。そう簡単に両思いになんかなれるわけがないのだ。分かっている。だからこそ、思い出してしまう。もう一度あの人に会いたい。でもきっとあの人は私になんか絶対に会いたくない。そもそも、私のことなんか忘れてしまっただろう。連絡先からも消されてしまっているのだから。
夢の中に、何度も桐生陸が現れた。夢の中の彼は大抵新しい彼女と幸せそうに笑っている。私は彼に謝りに行く。あの時は本当にごめんなさい。苦しめてごめんなさい。別れた直後、私は自分が悲劇のヒロインだった。でも、彼が私に別れを告げるのに十分なほどに、私は知らないうちに彼のことを困らせてしまっていたのだ。だから夢の中で会えた彼に、ひたすらごめんねを繰り返す。
彼は別れる時に理由を言わなかったけれど、元来マイナス思考な私に嫌気がさしたのだと分かっていた。だから大学生になってからというもの、明るく振舞うように努めていたのだけれど、心が弱っている時はどうしてもダメだった。また元の弱虫な自分に戻ってしまう。あなたを思い出してめそめそ泣いてしまう。
あんなに傷ついた恋だったのに、私は彼のことがこんなに好きだったんだ。
私と彼はもう、どうしたって交わらない。同じ空の下で息をしているはずなのに、ねじれの位置で生きている。もう会えないということは、死んでしまったのと同じようなものだ。
会いたい、でも会ったところで突き放されるのは見えている。
だから会わない方がいいのだ。
一生、会わない方がいい。
帰省すると、どこかに彼がいないかと探してしまう自分がいる。
東京に遊びに行くたびに、彼とすれ違っていないかと確認する自分がいる。
そんな自分と、早く決別したかった。