水鏡では、若い男がじっと慰霊碑を見つめていた。
背が高く体格もがっしりとしている。
村人にしては、精悍な顔立ちが目を引く。
男はうずくまり、肩を震わせた。
泣いているのか。
おおかた、鼓水に気を寄せていた男の一人か。
鼓水はその様子を沈痛な面持ちで見つめている。
くだらん。
「もういいだろう」
「あ……」
水鏡を消すと、思わずといった様子で鼓水が声を漏らした。
「どうした」
「い、いえ……」
「今更地上のことなど気にしても仕方ないだろう」
つい吐き捨てるように言ってしまうと、鼓水は下を向いて押し黙り――そして覚悟したように顔を上げて笑った。
「透冴様の仰るとおりです。ここへ来たのは自分で決めたこと。地上のすべてと縁を分かつ覚悟で来たのです」
どこか自分に言い聞かせているような口調だった。
違和感が、胸を掠めた。
しかし私は気付かないふりをしたのだった。
背が高く体格もがっしりとしている。
村人にしては、精悍な顔立ちが目を引く。
男はうずくまり、肩を震わせた。
泣いているのか。
おおかた、鼓水に気を寄せていた男の一人か。
鼓水はその様子を沈痛な面持ちで見つめている。
くだらん。
「もういいだろう」
「あ……」
水鏡を消すと、思わずといった様子で鼓水が声を漏らした。
「どうした」
「い、いえ……」
「今更地上のことなど気にしても仕方ないだろう」
つい吐き捨てるように言ってしまうと、鼓水は下を向いて押し黙り――そして覚悟したように顔を上げて笑った。
「透冴様の仰るとおりです。ここへ来たのは自分で決めたこと。地上のすべてと縁を分かつ覚悟で来たのです」
どこか自分に言い聞かせているような口調だった。
違和感が、胸を掠めた。
しかし私は気付かないふりをしたのだった。