「なんだと? 湖のほとりに?」

湖で数十年生きる老魚が報告してきたのは、それからしばらく経ってからのことだった。

「水を汚すわけではないので私たち湖の住人に被害はないのですが、このようなことは初めてだったので。主である透冴様に念のためお伝えせねば、と」
「そうか、大儀であったな」
「まったく、人間がすることは理解に苦しみますな」

と、ぼやきながら戻って行く老魚を見送って鼓水が首を傾げた。

「何かあったのですか?」

私は神力で水鏡を作ると、鼓水の目の前に掲げた。
これで地上の様子を見ることができる。

「おまえの村の者達が、ほとりに像を建てたそうだ」

水鏡の中には、人間と同じ大きさほどの像が映っていた。
老魚の報告通り、これまでは無かったものだ。
像は若い娘の姿形をしていた――よく見れば、鼓水とそっくりだ。

「鎮魂碑……」

像に添えられた文字盤を見て、鼓水が呆然とした声で呟いた。