予想していた答えに、苦い思いが走る。
胸が締め付けられるような痛みを感じながら、とつとつと続く言葉に耳を傾けた。

「幼い頃に両親を亡くし身寄りを無くした私と弟は、騙されるように人買いに買われ、奴隷とされました。その時付けられたのが、この痕です」

と、袖を捲り上げて、鼓水は痕を見せてくれた。

白い腕に痛々しく浮かぶ、赤黒く焼き爛れた痕。
紋章のようなそれの下には、漢数字も押されていた。
まるで物に付ける品番のように……。

「私達の本当の故郷は別にあります。今の村には、弟と一緒に奴隷として連れて来られました。姉弟一緒に買われたのは旦那様のせめてもの情けだったかもしれません。弟がいてくれたからこそ、私は生きてこられましたから」

故郷を想うような遠い目は、悲しみの色が滲んでいた。

浅ましくて残酷。
私が毛嫌いしてやまない人間の本性。
それに鼓水もまた傷つけられていたのかと思うと、怒りが沸き起こってくる。