卒倒しそうになっている鼓水の背に手を添えて、私は深々と頷いた。

「愚問だ。私は神だぞ」
「だからだよ。姉ちゃんはな、俺が立派な男になって不自由のない暮らしをさせて、将来は立派な男に嫁がせてやろうと思っていたんだ。それをこんな白ヘビだか龍だか訳の分からない野郎に嫁ぐなんて……!」

俺は悲しいぞ……! と男泣きをする草輔。
これではどっちが年上なのかわからんな。

そんな私の心情を代弁するように、燿興がしげしげと草輔を見つめながら言った。

「確かに鼓水より年下には見えないよな。兄者が恋敵とはやとちりするのも頷ける」

まぁ燿興がそう言うのも否定できない。
一見するなら、侍とも見える高い上背にがっしりとした体格。
鼓水に似て大きな目は子供の名残があるが、意思の強さを思わせるその輝きは、世間をしっかりと経験してきただろう頼もしさを感じさせる。

「そうね、私も最初は我が目を疑ったわ。村から出て行ったあと、ものすごく頑張ったのね」

感慨深げに頷く鼓水に気を良くしたのか、草輔は誇らしげに鼻を掻いた。

「姉ちゃんが生贄になろうとした二年前から、ちゃんとした男になって姉ちゃんに迷惑をかけないって決めたんだ」

その時は確か十三歳だったはず。
まだ子供と言ってもいい年齢なのに、なかなか大した心掛けだ。