「弟に会いたくなったら好きな時に私に頼むがいい。地上に連れて行くし、なんなら弟をここに呼んでも構わない」
「そんな、恐れ多いこと……!」

目を丸くする鼓水に、私はぎこちなく微笑を浮かべた。

「おまえが他の男と密会していると思ったら気が気ではなかった」
「透冴様……」
「奪われたくなくて、男が憎くて……私が私でなくなるような激しい感情が沸き起こってきた」

私は鼓水の頬に愛おしげに手を添える。
すると、それが真っ赤に染まっていることに気付いた。

「ん? どうした」
「いえ、あの、なんでも」
「気になるではないか」
「あの、その……嬉しいと思って……! 透冴様が、私に……嫉妬してくださったことが……」

と言って、くるりと背を向ける鼓水。

「お忘れください! 嫉妬などと、思い上がるにもほどがある言葉――」

私は後ろから鼓水を抱き締めた。
そして、その温もりにほっと目を閉じて、微笑を浮かべた。

「そうだ。私は嫉妬したよ。おまえが愛おしくて」