なるほど、絆の深い姉弟のことだ。
自分が不在の間に姉が入水自殺したとなれば、深い悲しみに暮れるのは当たり前だ。
そしてそんな弟を目の当たりにして、鼓水はどれほどの罪悪感を覚え、人の世を捨てる決心を揺らがせてしまったことか……。

「しかしながら、あの男、弟には全く見えなかったが……」
「最初に水鏡で見た時、私も目を疑いました。背が高くなって体格も逞しくなって、たった数年の間に弟は大きく様変わりしていましたから。ですが――」

鼓水は腕を掲げ、あの焼き印を私の眼前に晒した。

「弟の腕にこれと同じ文様のものがあるのに気付きました。通し番号も私と隣り合わせのものでした」

と微笑む鼓水の目は、懐かしむように優しい色を浮かべていた。

そうか、と私の中で突然得心がついた。

『今となっては、この焼き印も私の一部です』

あの時の鼓水の言葉には、もっと深い想いも込められていたのだ。
焼き印が弟との絆の証でもある、という特別な意味が。

「すまない……」

力なく詫びるしかない私に、鼓水はかぶりを振った。

「いえ、元はと言えば私がいけないのです」
「おまえは、たった一人きりの弟との再会を許さぬほど、私が冷淡な神に見えるというのか」
「え、そ、そういうわけでは」

慌てる鼓水を私はそっと抱き締めた。